
最近は人が人を信じないという世相を反映してか、目を疑うような悲しい事件が多発していますね。
そんな中「やはり人間は心を通じ合わせることが嬉しいし楽しいのだ」と認識する「事件」がありました。
遠路からのお客様が見えたので、食事後にどこかへお連れしようと神田の夜をご案内しました。
とはいっても若い子がいるようなお店ではなく、開店30年以上を経た駅前の雑居ビルにある「T」
というスナック(笑)です。
そこは以前懇意にしていた老舗バー「クイン」が40年以上たって昨年末閉店し、その名物マスター
(推定70歳)が移った店でした。
入ってみると今は当たり前になっているカラオケが「ない!」
歌の上手なお客様だと聞いていたので、案内した手前ちょっと参ったのですが、その代わりに
ギターを手に「流し」のギタリスト「たけちゃん」先生(推定60歳?)が、これまたそこそこご年配の
お客さんの演歌(・・・)にあわせて伴奏をしている店だったのです。
ぶっちゃけいいますと最初は「ウワー」。お客様もさすがに「ウワー」。
ただ「たけちゃん」さすがにプロ。お客さんのリクエストに全て完璧に応え、客のリズムがどんなに
狂っていてもしっかりと曲として仕上げる技術と柔らかい音色にだんだんと私達は引き込まれて
いったのでした。
そこでせっかくなら・・と皆で歌い始めたらこれがオモシロイ。ま、バンドをやっているので
生演奏ならではの呼吸とかのライブな感じに、いつしか皆が盛り上がっていったのです。
カラオケはまさに機械なので味も素っ気もないですが、ギターとのかけあいで生まれる曲は
ヘタウマ調にどんな人の曲でも「シャンソン」のようなのです。
私達についてくれたペギー葉山似のホステスさんはそんな中「彼はね、やはりこういう仕事だから
終わったあとすごく疲れるときととても元気になるときがあるといってるんですよ」と教えてくれました。
やる以上は真剣に楽しむ、そんな我々の空気感を彼はとてもとても喜んでくれたのです。
「いやー今日は本当に嬉しい。音楽の力ってすごいね。私が皆さんにパワーをもらいました」と。
そんな宴も終わりに差し掛かったころ、彼がとても嬉しいのでぜひ見てほしい・・と
胸元のポケットから取り出したものがありました。
「?」
・・・それは今年の1月3日に彼の奥さんが亡くなった、形見のペンダントとヒスイの指輪でした。
彼は以前昼にかけもちで仕事をしながら、夜ギターを弾き続けていたそうです。
長年連れ添った奥様を亡くし、それでもギターを弾きつづけてきたのでしょう。
「奥さんも喜んでいるでしょうね」ペギーさんがやさしくそういいました。
帰り際、彼がある曲を静かに始めました。私の母親が大好きで子供の頃から親しんだ名曲
「今日の日はさようなら」短い曲ですが、3番まである歌詞もメロディーも大好きな曲です。
店にいたマスター夫妻、ペギー、お客様2人、そして川村と私で最後は合唱。
なんだか本当にジーンときてしまいました。
固い握手をたけちゃんと交わし、またの再会を約束。
外は寒かったけれど、全く寒さを感じないほっこりした感動的な夜でした。
また必ず行きます。神田のほっこりナイト、よければ皆さんもご一緒しましょうね。
今日の日はさようなら 1967年 詞・曲 金子詔一
1.いつまでも絶えることなく 友だちでいよう
明日の日を夢見て 希望の道を
2.空を飛ぶ鳥のように 自由に生きる
今日の日はさようなら また会う日まで
3.信じあうよろこびを 大切にしよう 今日の日はさようなら
また会う日まで また会う日まで